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第一回 人間は全天候型じゃないよね
昔、母がよく頭が痛いと寝込むことがありました。時は平成のはじめ頃だったと思います。母は子宮筋腫を患い、現代では珍しく、子宮の全摘出手術を行っていました。ホルモンのバランスが悪くなり、生理の周期になるとは、片頭痛が続くと悩んでいたものです。痛すぎるとそれこそ市販の鎮痛剤を山のようにのんでしまい、過剰摂取の常習者と認定されてもおかしくないほどでした。
片頭痛が始まり、鎮痛剤を飲みます。通常は20~30分ほどで効き始めるので、それまで辛抱して待ちます。なかなか効かないので、自分自身の興奮状態かと思い、寝床で横になります。目を閉じると少し眠りに落ちることができるようでした。おそらくこのとき少々は鎮痛剤が効いているのだと思います。ところが、このあと偏頭痛の耐え難い痛みによって目が覚めるのです。ここで時計を確認したらいいのですが、薬のせいなのか、グッと寝たように感じるようなので時計を見ずに、新たに鎮痛剤を飲みます。その後また同じルーティンですが、少しずつ胃壁がやられていきます。胃薬も併用しますが、その薬で胃壁を回復と言うのは、無理だというものです。気づかずに過剰摂取になるのが嫌で、自分で我慢していくと、母の右目はまぶたが少しずつ下がってきて、某幽霊映画の幽霊のような顔つきになっていました。なんとも悲惨な面持ちです。母が偏頭痛を患うのは季節柄ももちろんありましたが、最近ニュースの記事を見てようやく因果関係に気づきました。
最近名付けられたそれは「気象病」。もちろん晴天快晴であれば、気分は晴れやかでウキウキしますが、そっちのことではありません。天気のせいで、心身に不調が現れることです。気圧の関係や湿度、気温で体調がおかしくなっていくのです。翌々考えてみれば、生物にはそんな力が備わっていて当然だと思います。
昔良く聞いた迷信なのか、言い伝えなのかですが、
「朝に蜘蛛が巣を張り始めていたら、その日に雨は降らない」
とか
「鳥が低空飛行をするともうすぐ雨が降る」
とか言うたぐいの話です。気圧や湿度を感じるセンサーを持ち、それによって一日の行動や方針を決めていく機能は、生死に関わることなのです。持っていて当然だと思えます。
ぬくぬくと年中安定した気温の中で部屋の中で過ごすことが多くなった人類が、捨ててきた野生の力のなんとも多いことだろうと思わされます。
最近も、年老いた母は、連れ合いの父に先立たれ、施設で一人暮らしですが、友達もできたし面倒も見てもらえ、満足ではないにしろ、まんざらではない日々を過ごしています。
そのなかで、やれ腹の調子が悪い、やれ頭痛が重いなどと話すことがあります。
もしやと思い、母の住んでいるエリア周辺に低気圧が近づいてきたときを狙って、電話をすると案の定、体調が崩れてきて頭痛が重くなり始めていると言っていました。
まだ空は快晴なのに、低気圧が張り出していることは、気象衛星をネットで見たらわかることです。そこを狙って電話をするのです。
「調子が悪くなり始めていませんか?大丈夫ですか?」と。
これはすべての人に当てはまることではないと思いますが、人による特徴を探し出してあげる、または自分自身を分析して、パターンを見つけ出すのも、ためになる活動かもしれません。
もはや、年老いた母の体には月経の周期はありません。月経の周期だと思っていた体の変調は、意外にも天候不順のせいだったのです。
もちろん断定をすることはとても危ない判断ですが、連絡を始めた最初のうちは母がとても不思議がったものです。
「あんたは、私の体調が悪くなり始めると電話をくれるね。」と。
心中では「それは秘密です。ふふふ。」と思っていたものでした。
何か長年の不可解な謎を解き明かした考古学者のように気分は晴れやかでした。
しかし、元になったネタのニュースや、学術的な知見を発表した人は偉いと思います。大地震の前に逃げ出すネズミの話や騒ぎ出すナマズの話がありますので、生物が全天候型では無いとわかりそうなものでもありますが、灯台下暗しだなと、筆者は心底感じさせられた機会でした。
こうなると、あらゆる心身の不調が、天候や自然環境に影響するのではと考える性格をしていますので、いろいろ調べてみると結構ありました。ちょっと興味深いなと思ったのは、新月や満月のときの犯罪率の増加や、死亡率、出生率の変化です。そのことを調べて以来、ニュースで著名な人の訃報を目にしたときや、有名時の赤ちゃんが生まれた日などは、月齢を調べる癖がついてしまいました。
統計学を見るときに鵜呑みにしてはいけませんが、その中に間違いなく真実は隠れているものです。少々重苦しいコトをかいてしまいましたが、実は筆者はあまり統計学を崇拝はしていません。
どんな面白そうなデーターでも少し引いて見るように心がけています。
ひどいものの代表格でよくあるのが、アンケート結果です。
「Webサイトでアンケートをとりました!」というものですが、「第一問、あなたはインターネットを頻繁に利用しますか?」と、最初からこういった質問で来ると、もはや絶句してしまいます。
「えっと、インターネットを頻繁に利用するから、きっといま、インターネットでアンケートを答えていると思う。」とおもってしまうのです。
女子更衣室に飛び込んで、「女子は手を上げなさい!」というようなものです。ちょっとLGBTもあってそのあたりは難しくなっていることも避けられはしませんが、質問の仕方と統計の取り方は気をつけたほうが良いに決まっています。
アメリカの面白いサイトで、紹介していましたが、統計を取った結果として発表されたデーターで、「ニコラス・ケイジが映画に出るとプールの溺死者が増える数には66%相関性がある」ということや「科学や宇宙の技術に費やされるお金と、自殺率の間の相関性は99.79%」という、誤った関連付けについて、統計学上の「論理的誤謬」(ろんりてきごびゅう)というものがあります。
「タバコを吸う人が肺がんになりやすい」ということはよく理解できるし、臨床結果も発表されていますが、このことを「論理的誤謬」を起こして曲がった解釈にすると、「皆さん気をつけて!ライターを持った人の90%は肺がんになります!」となります。ひどいものです。
「アンケートや統計結果は鵜呑みにしてはいけません」という良き教訓だと思います。
そういうことを往々にして経験している筆者は、母の具合と気象情報のデーターを集めて分析してはいません。その情報は、自分の母にしか適用できないと思いこんでいますし、そこまでやらずとも解決策も判明したからです。最初は母の姉から、「腰を暖めると片頭痛が治ったよ」という、ありがたい話をお聞きし、実践したのですが、一向に快方に向かいませんでした。温めると良いのかもしれないという一筋の光明の中で発見した方法であり、今のところ判明しているその解決策とは、「お風呂に浸かる」ということです。思い込みが人類を救うという筆者の座右の銘は横においておきますが、どうやらそうなのです。
気圧のせいなのか、温度のせいなのか、気分のせいなのか、理由はわかりません。探究もしていませんので、それはわからないのですがまちがいなく、スッキリと楽になるそうです。
日常に過ごしている気圧や、環境が気候によってかなり変化しているのをお風呂に浸かることによって防護されるのかもしれません。全くの仮説です。低気圧が張り出してきて、「そろそろかしらね?」と電話をすると、お風呂に浸かるそうです。風呂から上がった後、また浸かりに戻りたくなるぐらい、お風呂に浸かっている間は楽になるそうです。
最近は気候病を母に伝えましたので、自分で天気予報を見てはお風呂に浸かるようにしているようです。
やがて、未来にはお風呂で生活するということもあるのかもしれないですね。(ないない)
楽だからという理由からシャワーで済ませてしまう現代人に、警告しておきます。
すでに周知の事実なのかもしれませんが、再度、声を大にしていいます。
「風呂に浸かる」というのは、我々が考える以上に大切な慣習かもしれません。
この記事を読んでどのくらいのシャワー派の人が、
「そうなんだよね~お風呂いいんだよね~」とか
「じゃあ、今日は久しぶりにお湯を張って浸かってみるか」
となってくれるのかはわかりません。しかし、是非オススメです。よくある注意書きは一筆書いておきます。
※健康上に不安がある人は、お医者様と相談の上お風呂に浸かってください。次回に続く・・・